酪農家の8割が、家族以外の従業員ゼロの家族経営になっています。乳牛はとても繊細なうえ子牛の育成や妊娠出産などにきめ細やかに対応することが、必要になってきます。しかも搾乳は一日たりとも休めません。そのため牛を大事に丁寧に飼える家族経営が向いているといわれています。
しかし家族経営の酪農は、これまで労働条件や報酬があいまいで経営状況も不透明、後継者が安心して働けないなどの問題点もありました。その解決法として市町村の農業委員会の支援と立会いの下、家族経営協定の締結が進められています。家事も経営を支える労働として認めるほか経営状況をオープンにして給与、労働時間、休日などを家族で相談して取り決めています。それだけではなく将来どんな農業を目指すのかビジョンを話し合うことも、協定の大きな意味があります。
妊娠と出産を繰り返して乳量のアップ
乳牛は子牛が飲む量より多く乳を出すよう、人間が作り上げた家畜です。一日に十数キロから五十キログラム、多い牛だと七十キログラムもの乳を出しています。乳量が最も多いのは出産後、三十から五十日ごろで子牛の成長に従って、乳量も減っていきます。そこで人の手で妊娠出産を繰り返すことで、乳量を多くします。最初の人工授精は生後十四か月の頃です。牛の妊娠期間は約十か月になっています。出産したら搾乳を行っていきますが、二か月後にはもう人工授精を行います。妊娠したら搾乳は出産の二か月前までは体力をつけさせるために、いったん休みます。
このように乳牛は一年間に出産一回、搾乳十か月という周期を三、四回繰り返します。やがて年をとって乳量が減ると、その後は食肉となったり皮革製品の材料として活かされていきます。
コンピューターシステムでコストを削減
機械化とコンピューターの導入はどの牧場でも行われています。日本で生まれた牛は、すべて個体識別番号がデータベース化され乳牛は一頭ずつ乳量や乳成分、繁殖情報などのデータをコンピューターで管理して飼育と繁殖に反映させています。
最近はより高度な機械化で規模拡大して、コストダウンと収益アップを目指す動きが起こっています。搾乳牛が三百頭を超えるメガファームが各地に出現して、千頭以上の牧場も存在しています。大規模な牧場では牛を一頭ずつつながずに牛舎の中で放し飼いにして、搾乳の時には搾乳機が並んだ部屋に牛が自分で歩いてはいる搾乳システムが、一般的になっています。また搾乳に人間の手をかけずコンピューター制御の搾乳ロボットが、乳房の洗浄と消毒、搾乳を行うシステムもあります。